新緑の緑と、バラなどの花がいっせいに咲いていて、一年で一番美しい季節になりました。名前は分からないのですが、ウォーキングコースの、川の土手にたくさん咲いていて、今がピークです。
2月の日曜コラムでも、「統計のマジック」を取り上げました。今回は、その続きです。今月の半ばに、総務省から全国家計調査報告による、2人以上の世帯の平均貯蓄金額が発表されました。なんと、1世帯あたり1820万円だそうです。内訳は定期預金が727万円、普通預金が412万円、生命保険が378万円などです。いかがでしょうか。「こんなたくさん無いよーー」と言う声が聞こえそうです。これは単純平均の結果なのです。これが統計のマジックです。実際は、ごく一部の富裕層が、全体の平均値を引き上げているのです。実際には全体の3分の2は、平均値の1820万円を下回っているのです。
統計のマジックの怖さがここにあります。本来ならば、この様な統計を取る場合は、生活スタイルの似た階層別に集計するのが、正しいやり方だと思います。サラリーマン・公務員・自営業・年金生活者・経営者などに分類したうえで、集計しないと実態と合わない数値が出てしまいます。同じデータを使用しても、まとめ方で数値が大きく変わります。サラリーマン層なら、貯蓄額はせいぜい年収の1-2年分くらいではないでしょうか。逆に言えば、同じデータから数字を操作することも可能なのです。ですから、発表される数字もよく「裏読み」する必要があります。
毎年、奈良県の特別支援学校を卒業する生徒の進路調査をして4年ほどになります。各学校の進路指導の先生方にご協力頂いています。各都道府県の教育委員会でも、特別支援学校の就職者数を発表していますが(公表していない所もあります)、この数値も就労した生徒の合計を全体の卒業生の合計人数で割った数字です。都道府県により差はありますが、25~40%程度でしょうか。しかし、軽度の知的などの生徒を選抜し、就労に特化した特別支援学校では、どの他府県でも、80%以上の就職率になっています。一般の特別支援学校では、10%程度です。つまり、ここでも、就労に特化した支援学校が全体の数字を押し上げています。単純平均では、正しい実態が反映出来ないのです。
ハローワークから発表される数字にも、同じ事が言えます。ハローワークを通じて就職できた人の人数は毎年連続して増加していますが、これは、1日でも働いたら、就労実績としてカウントされる仕組みになっています。定着に関してのデータは、なかなか少ないので、実際には半年・1年後にどれだけの人が働き続けているかは、定かではありません。これからは、単に就労した人の数を競うだけではなく、「永く働き続ける」ことが大切な時代になりました。