障がい者週間2022123日から9日は「障がい者週間」です。奈良市でも、8日に企業と事業所・行政機関などとの交流会が開催されます。

 過日、障がいを持つ子ども達の就労について保護者の皆さんにお話しする機会があり、福祉就労を進路として選んだ場合の選択肢について解説しました。就労継続支援A型事業所ならば全国平均で月額約8万円の賃金、B型事業所ならば月額約16000円程度の工賃がもらえることを説明しました。あくまでも、全国平均であることは理解して頂きました。

 合わせて、自立のひとつの方法としてグループホームでの生活費についても解説しました。家賃のファクターが大きいので地域にもよりますが、全国平均すれば月に10万円程度は必要になります。標準的な小遣いや昼食費も含んでの話です。障がい年金を受給出来れば、A型の賃金ならばなんとか生活は出来ます。しかし、B型事業所であれば、障がい年金をもらっていても不足します。

 この様に福祉就労の場合、障がい者年金をもらえない場合は、経済的な自立は難しい(出来ない)のが現実です。福祉事業所でも月額10万円を稼げる様にしたいところです。特にB型の工賃は、過去からほとんど上がっていません。「工賃倍増計画」が各自治体で取り組まれたことがありました。成果を上げた事業所もありますが、大半は大きくは上がることはありませんでした。

 最近、福祉事業所の運営者が書いた本を読みました。いろいろな事例が掛かれていて、大変参考になりました。一番感じたのは、事業所の営業力というか経営的な視線で事業所を運営していることでした。IT業界への参入や人手不足の企業に「施設外就労」で人手を派遣したりと、企業と事業所がWin-Winの関係を構築しているところです。

 また、人手の足りない業界や業種に前記の施設外就労や、事業所を分工場として使う施策などいろいろな提案をして仕事の幅を広げ、付加価値を高める事で工賃や賃金の向上を果たしています。これは私がこの活動を始めた時に事業所のみなさんに呼びかけた「パンとクッキー・内職しごとからの脱却」とおなじ主旨です。付加価値の高い仕事に挑戦することが必要なのです。

 従来型の「居場所提供」ではこの発想は出てきません。過去の工賃倍増計画が上手くいかなかった事業所はこのタイプです。障がい者が自立していくために、工賃・賃金のアップは必要です。この事を理解して事業所を運営している施設長はどのくらい居るのでしょう。もちろん、重度の障がいを持つ人が多い事業所では難しいかも知れません。

 しかし、多くの事業所ではまだまだ工賃・賃金を上げる余地はあると思います。前記の様に運営者や施設長が経営的な視線で、新しい事業を開拓していく姿勢と行動力が欲しいと思います。今後も人手不足は続きます。生産人口が減少していくのですから、当然です。AIやロボットに置く変えられる仕事は置き換えればいいのですが、置き換えられない人手が必要な業種や業界はたくさんあります。著者も本文で書いていますが、事業所の運営者や職員の多くは、福祉の世界だけで生きてきた人が多いので、ビジネス感覚が乏しいと指摘しています。

 外国人労働者に頼る前に、まずは障がい者の雇用を進めていくことです。障がい者はすべての仕事が出来ないわけではなく、出来る仕事もたくさんかあります。そこを企業とうまく分担することで、Win-Winの結果が出せると思います。それには前記の様な運営者や施設長の発想の転換と企画・営業力に掛かっています。ぜひ障がい者が経済的な自立の出来る福祉事業所をめざして頂きたいと思います。

参考図書: 「障がい者を生かすと会社が儲かる」 兼子文晴著 ビジネス社

 

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